大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(ツ)72号 判決

所論は、原審が上告人の本件報酬請求を排斥したのは、商法第五一二条及び宅地建物取引業法第一七条の解釈を誤まつた旨主張する。

思うに、上告人のようないわゆる宅地建物取引業者が不動産取引の媒介を引受ける契約はいわゆる仲立契約であつて、依頼とは準委任の関係に立つと解されるところ、委任に関する民法の規定によれば、この場合当然には報酬の請求ができるとはいえないが、宅地建物取引業者はその媒介を引受けることを業とすることによつて商人となる(商法第五〇二条第一一号、第四条第一項)から、仲立契約において特に報酬を支払うべき旨の約定がなされてなくても、商法第五一二条により報酬を請求することができると解される。しかし、このことから直ちに、その媒介により契約が成立したかどうかを問わず報酬を請求することができるとは断じ難く、この点については仲立契約の性質に徴し検討を要するものと解されるところ、仲立契約においては、通常受託者は媒介を依頼された契約の成立に尽力する義務を負い、委託者は契約の成立に対して報酬を支払う義務を負うものと解されるから、仲立人は、その尽力により媒介した当事者間に契約が成立しない限り報酬を請求し得ないものというべく、このことは、商法に規定する仲立人すなわち商行為の媒介を業とする仲立人については、商法第五五〇条第一項、第五四六条の規定に徴してもこれを窺うことができるのである。ところが一般に不動産に関する取引そのものは必ずしも商行為とはいえず、従つてその媒介を業とする宅地建物取引業者は商法上の仲立人には属しないけれども、仲立契約の性質に照らし、上記の点で両者を異別に扱うべき合理的な根拠は見出せないのであつて、前記商法第五五〇条第一項、第五四六条の規定の趣旨はそのまま宅地建物取引業者についても妥当するというべきである。しかして、第一点について引用した原判決確定の事実に基けば、被上告人が本件ビルを賃借したのは、上告人の媒介によるものといえないことは原判決の説くとおりであり、また本件において、信義則上右の賃貸借が上告人の媒介によつて成立したと同視すべき事情も見出せないので、原審が本件報酬請求を排斥したのは相当であつて、商法第五一二条の解釈を誤つたとはいえないし、また宅地建物取引業者の取得すべき報酬額を規制する宅地建物取引業法第一七条の規定に違背するものでないこともいうまでもない。

(岸上 中西 室伏)

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